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AIではなく人の手によるネイティブ翻訳が大事な理由

昨今、AI翻訳(機械翻訳)は大きな飛躍を遂げました。無料で手軽に利用できるツールもありますが、ネイティブによる翻訳が今後不要になるのでしょうか?AI翻訳とネイティブ翻訳が、それぞれどのようなシーンに適しているかを解説していきましょう。

AI翻訳とは

AI(人工知能)を使って、文字や音声などの言語を翻訳することをAI翻訳といいます。

ルールベース翻訳

1970年代後半のAI翻訳は、「ルールベース翻訳」が一般的でした。ルールベース翻訳は、あらかじめ単語や文法を登録しておき、ルールに従って機械的に単語を訳し、訳語を並べ替える方法です。学習データが少なくても精度に影響しないのが大きな利点ですが、人の手で単語や文法を登録するには、手間やコストがかかりました。口語や慣用句の翻訳が苦手なうえ、新しい単語が出てくるたびにデータの追加・更新が必要となります。

統計翻訳

1990年ごろに登場したのが「統計翻訳」です。単語ごとに大量の対訳データを解析して、状況に適した翻訳が可能です。統計の手法を用いているのが、この名前の由来です。子どもが言語を学ぶときのように、例文が多くなるほど精度が上がります。統計翻訳はインターネットが発達したことで、対訳データの不足という課題を解決しました。ニュアンスを汲み取れるため、意訳に適しています。

ニュートラルネットワーク型

AIの機械学習を利用した翻訳が「ニューラルネットワーク型」です。人間の脳の神経回路網をモデルとし、使えば使うほど、強化学習によって自然な翻訳ができるようになります。多くの人にとって最も身近なAI翻訳は、Google翻訳でしょう。Googleは2016年に独自のニューラル翻訳システム、GNMT(Google Neural Machine Translation)を発表しています。ニューラルネットワーク型で高い精度を得るには多大な学習データを必要とするため、時間をかけて自分好みに育てる必要があります。

AI翻訳のメリットとデメリット

AI翻訳のメリット

AI翻訳の最も大きなメリットは、翻訳の速さです。使用するツールや文章の長さにもよりますが、ほとんどの場合、数秒から数分で完成します。また、一定のルールに従って翻訳するため、翻訳者による品質の差がありません。また、無料または低価格なサービスが多く、プロの翻訳者に依頼したときに比べてコストが低いため、気軽にツールを使えることもメリットです。

例えばGoogle翻訳をスマートフォンにダウンロードするだけで、海外旅行の際に看板の文字を写真に撮って翻訳したり、音声で地元の人に話しかけたりすることができます。

AI翻訳のデメリット

AI翻訳の重大なデメリットは、翻訳されない部分や誤訳があるなど、正確さに欠けることです。常に変化する新しい言葉や、皮肉、冗談を理解するのも苦手です。小説をはじめとするクリエイティブな創作や、時間と読みやすさに合わせて意訳する字幕の翻訳にも向いていません。文字数の把握ができないため、文字数に制限のある新聞記事の翻訳も難しいでしょう。

また、AIは国や地域の文化的背景、言語の特徴を考慮して訳すことができません。以前Google翻訳がトルコ語を英語に翻訳したところ、「彼は医者だ」は「He is a doctor」と変換されましたが、「彼女は医者だ」は「She is a nurse」と変換されました。トルコ語には性別を表す三人称がなく、性別は文脈で決まるためジェンダーバイアスがかかったことが理由です。Googleは対策として、トルコ語の「o bir doktor」に「He is a doctor」と「She is a doctor」の2つの訳を付け、利用者の用途によって選べるようにしています。

そのほか無料公開されているツールでは、悪意のある翻訳を学習させることによって、差別的で偏りのある訳文になる可能性があります。
また、情報漏洩のリスクも見過ごせません。利用する翻訳サービスが翻訳データを外部に漏らさず、破棄しているかを確認することが大切です。

AI翻訳ができても人の手によるネイティブ翻訳が大事な理由

AI翻訳は、まだ多くの課題を抱えています。翻訳ツールを利用しても、最終的には人の手によるチェックや修正が不可欠となります。その反面、ネイティブ翻訳者による翻訳は、訳出言語を母語とするプロが翻訳するため、地域性や言語の特徴を踏まえ、AIのデメリットをカバーする自然で正確な翻訳が可能となります。

特に日本語は欧米の言語とは構造が異なり、主語・目的語の省略や敬語など、AI翻訳が苦手とする一面をもつ言語です。情報漏洩の可能性を考慮して企業が対訳データを共有しない傾向があるため、日本語の学習データが少ないこともネックとなっています。

AI翻訳を使いこなすには、原文の文章力が問われます。短い文にする、主語・目的語の省略を避けるなど、AIが理解しやすい文にすることが正しく翻訳させるコツです。とはいえ、AIのための文章では、書いた人の心情がかえって伝わりにくくなるかもしれません。

ビジネス文章に限らず、大切な文章ほどネイティブ翻訳者に依頼する価値があると言えるでしょう。

上質な翻訳を求めるならネイティブ翻訳者へ

AI翻訳は、読書や旅行などの私的な使用には便利ですが、想いを伝えたい手紙やメール、公の書類や専門性の高い文章については最適とは言えません。
当社では、様々な言語を得意とするスキルの高い翻訳者を多数抱えていますので、お客様のニーズに合わせた翻訳を行うことができます。
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