グローバル社会において、英語の重要性は言うまでもなく、ビジネス、学術、文化など、様々な分野で共通言語として使われています。しかし、英語を「理解できる」ことと、「質の高い翻訳ができる」ことは全くの別物です。質の高い翻訳とは、単に言葉を置き換えるだけでなく、文化や文脈を理解し、読み手に自然に響くように言葉を紡ぎ出すことを意味します。本記事では、英語という言語の特性と文化的背景を踏まえ、高品質な英語翻訳の必要性と、そのポイントについて具体例を交えながら解説していきます。
「英語」という言語について
世界中で15億人以上の人々が使用する英語。大きく分けて、イギリス英語とアメリカ英語があり、それぞれ発音、語彙、文法に違いが見られます。イギリス英語は、イギリス連邦諸国を含む広範囲で使用され、伝統的な響きを持つ一方、アメリカ英語は、アメリカ合衆国とその影響下にある地域で使われ、現代的で簡潔な表現が特徴です。
英語はほかにも、アメリカ英語と語彙とイギリス英語の語彙の両方をあわせ持ち、独自のスペルをもつカナダ英語。イギリス英語をベースとしながら原住民である「アボリジニ」の言葉にから様々な影響を受けているオーストラリア英語、中国語やマレー語からの影響を強く受け「シングリッシュ」とも呼ばれるシンガポール英語などがあります。
英語は、ゲルマン語派に属し、比較的シンプルな文法体系を持っていますが、その一方で、膨大な語彙数と多様なイディオム、句動詞の存在は、英語学習者にとって大きな壁となっています。例えば「look up」という句動詞一つとっても、「見上げる」、「調べる」、「訪ねる」など、文脈によって全く異なる意味を持ちます。
英語が使われる文化的背景について
言語は、単なるコミュニケーションツールではなく、文化を色濃く反映する鏡でもあります。日本語と英語の間にも、文化的背景の違いが大きく存在し、質の高い翻訳には、この違いへの深い理解が不可欠です。言葉ひとつを取っても、その背景の違いは明確にあらわれます。たとえば朝の挨拶である「おはようございます」。「今日も朝からお早いですね」という事実を描写する表現です。
一方「Good morning」は「I wish you good morning」というお祈りやおまじないの意味が込められています。
相手に伝えたい思いや考え方が根本的に異なるということがよく分かりますね。些細な言葉の違いですが、この違いは観光案内やビジネスでの商談など複雑なコミュニケーションとなると大きな違いになってしまいます。
また、日本人は謙遜を美徳とする文化があるため、遠回しな表現や婉曲表現を用いることが多いですが、英語では、はっきりと自分の意見や気持ちを伝えることが重要視されます。例えば、飲食店で「もうお腹いっぱいなので結構です」と伝える場合、日本語では遠回しに表現しますが、英語では “I’m full, thank you.” と明確に断る表現が自然です。これらの文化的背景の違いを理解せずに翻訳を行うと、誤解を生んだり、意図が正しく伝わらない可能性があります。
英語翻訳の分野や今後の需要について
英語翻訳は、グローバル化が加速する現代社会において、必要不可欠なものです。企業の海外進出、国際的なビジネス交渉、学術論文の発表、海外向けの情報発信など、英語翻訳を必要とする分野は多岐に亘ります。
特に近年は、インバウンド需要の高まりを受け、観光業界における英語翻訳の重要性が増しています。観光案内、ウェブサイト、飲食店のメニューなどを多言語化することで、外国人観光客は快適に過ごし、消費を促進することに繋がります。しかし、質の低い翻訳は、逆効果となる可能性も孕んでいます。
例えば、ある英会話スクールのウェブサイトでは、日本語特有の表現である「お役立ち情報」をそのまま直訳して “helpful information” と掲載していました。しかし、英語圏では “useful information” や “tips” といった表現が一般的であり、直訳では不自然な印象を与えてしまいます。”helpful information”でも相手に意味を伝えることができますが、真に相手とコミュニケーションを取りたいのであれば、英語圏のセンスからみても違和感のない言葉遣いができる必要があります。
英語翻訳はネイティブ翻訳者に任せるのがおすすめ
質の高い英語翻訳を提供できるのは、ネイティブまたはネイティブと同等の言語能力を持つ翻訳者だけです。ネイティブ翻訳者は、幼少期から英語環境で育ち、文化や言語に深い理解を持っているため、自然で正確な翻訳が可能です。
例えば、「彼は医者です」を英語に翻訳する場合、「He is a doctor」となりますが、トルコ語のように性別で表現が変わる言語の場合、AI翻訳では「彼女は医者です」が「She is a nurse」と誤訳されるケースも報告されています。
このように、AI翻訳は日々進化を遂げていますが、文化的背景や文脈を理解し、自然で正確な翻訳を提供できるレベルには達していません。ビジネス文章はもちろんのこと、重要な情報や感情を伝える必要がある場合は、ネイティブ翻訳者による高品質な翻訳が不可欠です。
さいごに
今回は英語翻訳の難しさと翻訳のポイントについて、とくに相手の文化的背景に則した言葉遣いができることが重要であることを説明しました。
誰もが英語を勉強し、AIを活用した翻訳専用アプリなどのテクノロジーも便利になっていますが、相手の文化への配慮、直感的に違和感のない言葉遣いでコミュニケーションを取るには、ネイティブ翻訳者が必要であるといえるでしょう。
以下にご紹介するのは、弊社と提携しているプロのネイティブ翻訳家のコメントです。一見簡単そうに思われがちな英語翻訳ですが、実際は奥が深く、翻訳の際にはさまざまな配慮や工夫が必要であることをお分かりいただけるかと思います。
アメリカ人翻訳者のコメント
日本語を翻訳する際の、面白みのある難しさの1つは、時には3つか4つの層に分かれると思えるほど長々と続く複数の関係節を使えるという日本語の自由さです。手に負えない場合、文を切り分けて複数の英文に再構成し、混乱を招くコンマの果てしないオンパレードを避ける必要があります。とはいえ、同様のイメージを連想させるために言葉をどう配列できるかを探るのは、楽しくもあります。もう1つの難しさは、単語に英訳の候補がたくさんありすぎて、辞書はその半分以下しかカバーしておらず、しかも、載っているのはたいてい、自分が一番よく使う訳語ではないこと。最悪なのは、ポピュラーな辞書ですら、載せている用例が適切なニュアンスを伝えていなかったり、空似言葉だったりすることです。
LTOでは、和英・英和翻訳を専門とし、質の高い翻訳サービスを提供しています。英語翻訳は、すべてアメリカ人やイギリス人などのネイティブ翻訳者が担当し、お客様のニーズに合わせて、最適な翻訳を提供しています。高品質な翻訳をお求めの方は、ぜひLTOまでご相談ください。
イギリス人翻訳者のコメント
日本語を英語に訳すときには、直接対応するものが英語にない、日本独特の言葉や、慣用句、ことわざ、文化に関連した言い回しがどうしても出てきます。これはどんな翻訳にも共通した難題ですが、日本語の複雑さは、単なる語彙の問題にとどまりません。文化的理解や共通の体験に深く根ざした日本語の高文脈(ハイコンテクスト)性ゆえに、日本語の文脈内では余計であるとはいえ英語では明確さのために欠かせないと見なされる情報が往々省略されることとなります。これには、数や性別を示す言葉や、文の主語まで含まれますが、これらは日本語ではたいてい、前後の文脈や、話し手と聞き手の関係に基づいて推測されます。参考になる材料が十分にない場合、限られた文脈は、意図された意味を汲み取ることをとりわけ困難にするおそれがあります。さらに、動詞が最後に現れることが多く、主語や目的語が省かれることもある日本語の柔軟な文の構造は、さらなる難しさを突きつけます。翻訳者は、語彙のギャップを埋めるだけでなく、語られていない文脈や、書かれた日本語に込められたニュアンスも読み取って、明確で理解可能な英語になるよう、文の構造に手を加える必要があります。